なぜ海面上剥離限界で設計するのか?
1)ノズル背圧Pa(大気圧)が上がっていくと、不足膨張状態となり、ノズル後方で衝撃波が発生することで膨張が完了する。どんどんノズル背圧をあげていくと、ノズル出口でちょうど衝撃波が立つ状態となる。これを剥離限界と呼ぶ。剥離限界を通り過ぎて背圧を上げていくと、ノズル内部に衝撃波が進入し、加速ノズルとしての機能を果たさなくなる。
2)ノズル開口比ε〜推力係数Cfの関係は高空低圧領域と海面上高圧領域で形が異なる。高空領域では開口比を上げれば上げるほどCfをかせげるが、低空領域では上に凸の関数となっており、極大値が存在する。なぜ極大値が存在するのかというと、極大値を超えてさらに開口比を上げていった場合、ノズルでの出口圧が下がることで推力に対する逆方向の力=Ae(Pe-Pa)が発生しはじめ、効率が下がるためである。 これはもったいないので、極大値で設計するのが望ましいと言える。
3)しかし実際の開口比は極大値を過ぎた値、具体的には海面上剥離限界で設計する。というのも、ロケットの推力係数は高空で高くすれば高くするほど上がり、海面上の推力係数よりも高い値となる。ロケットの動作領域は主に高空であるので、ノズルは主に高空での性能を発揮すべきという観点から、海面上での動作特性を多少犠牲にして設計する。剥離限界以上に開口比を上げるとノズルとして機能しないため、海面上剥離限界が選定される。
出典:ロケットを理解するための10のポイント